第70回「ベランダの桔梗」《ハシ坊と学ぼう!⑬》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
月灯り亡母(はは)の縁側ちちろかな
肴 枝豆
夏井いつき先生より
「かつて母がくつろいでいた縁側に、ほんのり月の光が差し、そこにコオロギの鳴き声。寂しくもあり懐かしい哀愁を込めました。『亡母(はは)』と読ませるのは無理があるでしょうか?」と作者のコメント。
欲をいうならば、普通に「母」と書いて、亡くなっているお母さんかもしれないなあ、と読ませるのがベストです。「月」「ちちろ」の季重なりを成立させる技として、この場合でしたら「月のちちろ」のように合体させるのも一手です。
添削例
母あらば月のちちろをともに聴く
「かつて母がくつろいでいた縁側に、ほんのり月の光が差し、そこにコオロギの鳴き声。寂しくもあり懐かしい哀愁を込めました。『亡母(はは)』と読ませるのは無理があるでしょうか?」と作者のコメント。
欲をいうならば、普通に「母」と書いて、亡くなっているお母さんかもしれないなあ、と読ませるのがベストです。「月」「ちちろ」の季重なりを成立させる技として、この場合でしたら「月のちちろ」のように合体させるのも一手です。
添削例
母あらば月のちちろをともに聴く


天才を終えて桔梗の閉じた朝
奈良井
夏井いつき先生より
「『天才』って、大人が子どもに期待してかける言葉だけど、大半はその期待を裏切って平凡な道をゆく運命にある。天才子役とか見てると達観しすぎてて心配になるし、神童と呼ばれる子の将来は勝手に悲観してしまう。桔梗って凛として美しい色を放つけど、形は⭐︎みたいで意外と子供じみている。もう終わって良いんじゃないか、別の夜明けを受けて立つよ。そういう決別の朝のイメージです」と作者のコメント。
前半「天才を終えて」という書き方で、作者の意図通りに伝わるか。悩ましいところです。
前半「天才を終えて」という書き方で、作者の意図通りに伝わるか。悩ましいところです。


ぷつくりと桔梗のつぼみ詩を孕み
のはらいちこ
夏井いつき先生より
句材は良いと思います。「ぷつくりと桔梗」で、蕾だと分かるので、後半の展開はもう一工夫できそうです。
句材は良いと思います。「ぷつくりと桔梗」で、蕾だと分かるので、後半の展開はもう一工夫できそうです。


フロントのベネチアンマスク寒旱
空素(カラス)
夏井いつき先生より
「第64回『砂漠のホテル』〈フロントに仮面アートや寒旱〉の推敲です。『に』を『の』に変えてみました。仮面をもう少し描写とありましたので『ベネチアンマスク』としました。第66回『お台場の桜』の〈フロントのベネチアンマスク寒旱〉の投句時に、第64回『砂漠のホテル』〈フロントに仮面アートや寒旱〉の推敲と宣言しないで投稿してしまいました。スミマセン。フロントという場所の情報は不要とのことでしたが、『砂漠のホテル』でもやはり不要でしょうか?」と作者のコメント。
「ベネチアンマスク」と「寒旱」の取り合わせだけで、一句として結球できる材料は揃っています。どうしても「フロント」を入れたいのならば、〈ベネチアンマスク○○○○のフロント〉のような形にすれば、あまり障らない感じにはなります。
「第64回『砂漠のホテル』〈フロントに仮面アートや寒旱〉の推敲です。『に』を『の』に変えてみました。仮面をもう少し描写とありましたので『ベネチアンマスク』としました。第66回『お台場の桜』の〈フロントのベネチアンマスク寒旱〉の投句時に、第64回『砂漠のホテル』〈フロントに仮面アートや寒旱〉の推敲と宣言しないで投稿してしまいました。スミマセン。フロントという場所の情報は不要とのことでしたが、『砂漠のホテル』でもやはり不要でしょうか?」と作者のコメント。
「ベネチアンマスク」と「寒旱」の取り合わせだけで、一句として結球できる材料は揃っています。どうしても「フロント」を入れたいのならば、〈ベネチアンマスク○○○○のフロント〉のような形にすれば、あまり障らない感じにはなります。


寝そべりて華展に出せぬ桔梗かな
遊川百日紅
夏井いつき先生より
「台風なのか、朝起きたら倒れてしまっていて、華展には出せない状態でした」と作者のコメント。
「華展に出せぬ」は説明ですが、桔梗の倒れている様子を具体的に映像として書くことができれば、描写になります。
「華展に出せぬ」は説明ですが、桔梗の倒れている様子を具体的に映像として書くことができれば、描写になります。


死なまほし畳みて仕舞ふ桔梗かな
青猫
夏井いつき先生より
「死なまほし」とは、動詞「死ぬ」の未然形「死な」+願望の助動詞「まほし」(~したい)……で良いのでしょうか?
「死なまほし」とは、動詞「死ぬ」の未然形「死な」+願望の助動詞「まほし」(~したい)……で良いのでしょうか?


我儘な有給一日桔梗雨
猫笑ふふ
夏井いつき先生より
句材は良いと思いますが、「桔梗雨」という使い方に違和感があります。
句材は良いと思いますが、「桔梗雨」という使い方に違和感があります。


薄紅の蛍袋を摘む夕べ
すそのあや
夏井いつき先生より
「蛍袋」という植物を思った時、「摘む」という動詞が適切なのかどうか。ちょっと迷いました。
「蛍袋」という植物を思った時、「摘む」という動詞が適切なのかどうか。ちょっと迷いました。


妻不在三年やシェア畑は桔梗
オアズマン
夏井いつき先生より
「『三年(みとせ)』と読みます。畑で妻と共に野菜果物を作る予定が、妻が入院。いつもの日常を願い、桔梗を植えましたが三度目の秋。九八の破調とし、季語に託しました」と作者のコメント。
情報を全ていれようとすると、たった十七音しかない俳句の器を溢れてしまいます。まずは、「妻」のいない三年+「桔梗」で一句。それができたら、次は、「いつもの日常を願う」+「桔梗」で一句、という具合に切り分けていきましょう。
「『三年(みとせ)』と読みます。畑で妻と共に野菜果物を作る予定が、妻が入院。いつもの日常を願い、桔梗を植えましたが三度目の秋。九八の破調とし、季語に託しました」と作者のコメント。
情報を全ていれようとすると、たった十七音しかない俳句の器を溢れてしまいます。まずは、「妻」のいない三年+「桔梗」で一句。それができたら、次は、「いつもの日常を願う」+「桔梗」で一句、という具合に切り分けていきましょう。


銀と金木犀の香の差を知る日
りっこう
夏井いつき先生より
「庭の銀木犀と金木犀では、香りが違うことに、去年初めて気がつきました」と作者のコメント。
このような気づきこそが、俳句のタネをキャッチするアンテナです。銀木犀と金木犀の香りについて、「~の香の差を知る」と書けば説明になりますが、それがどう違っていたのかを具体的に書くことができると、描写になります。再度思い出してみましょう。
「庭の銀木犀と金木犀では、香りが違うことに、去年初めて気がつきました」と作者のコメント。
このような気づきこそが、俳句のタネをキャッチするアンテナです。銀木犀と金木犀の香りについて、「~の香の差を知る」と書けば説明になりますが、それがどう違っていたのかを具体的に書くことができると、描写になります。再度思い出してみましょう。


寂しけり風のあはひの桔梗かな
髙田 純佳
夏井いつき先生より
「寂し」が「けり」に接続する時は、「寂しかりけり」となります。更に、「けり」「かな」と切字が重複するのは、感動の焦点がブレるということで、嫌われます。


路地裏の軒下にあり桔梗かな
はっしん
夏井いつき先生より
「通りから一本入った道沿いの家々が、それぞれに工夫され、整然としていて素敵だったことを思い出しました。二転三転、いやいや二百転三百転(笑)して、〈路地裏の軒下に濃く桔梗かな〉〈路地裏の軒下染める桔梗かな〉も考えましたが、先生の『季語を信じる』という言葉がずっと頭にあり、この句になりました」と作者のコメント。
「~あり」で強く切れるので、下五「桔梗かな」が浮いてしまいます。
「通りから一本入った道沿いの家々が、それぞれに工夫され、整然としていて素敵だったことを思い出しました。二転三転、いやいや二百転三百転(笑)して、〈路地裏の軒下に濃く桔梗かな〉〈路地裏の軒下染める桔梗かな〉も考えましたが、先生の『季語を信じる』という言葉がずっと頭にあり、この句になりました」と作者のコメント。
「~あり」で強く切れるので、下五「桔梗かな」が浮いてしまいます。


血を遣らば飲み干しさうな桔梗かな
家守らびすけ
夏井いつき先生より
上五中七の表現意図には興味を持ちます。が、「飲み干しさう」という表現に「桔梗」が合っているのか。逆の言い方をすれば、「桔梗」という花に「血」をやったとした時の描写として、この中七が的確なのか。表現意図を実現するための言葉の選択には、まだ工夫の余地がありそうです。
上五中七の表現意図には興味を持ちます。が、「飲み干しさう」という表現に「桔梗」が合っているのか。逆の言い方をすれば、「桔梗」という花に「血」をやったとした時の描写として、この中七が的確なのか。表現意図を実現するための言葉の選択には、まだ工夫の余地がありそうです。


落丁の鴎外全集夏灯し
よはく
夏井いつき先生より
下五の季語「夏灯し」を「夏灯」とすれば、人選です。「~し」と送り仮名をつけると、動詞にも読まれてしまいますので、ここは取っておくほうが無難かと。



