第71回「芒野と風車」《ハシ坊と学ぼう!⑦》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
梅雨明けやあと半分のスカイツリー
かおりんご
夏井いつき先生より
「第69回『日本最古のビアホール』〈梅雨明けやスカイツリーはまだ半分〉で、半分の状況が曖昧とのご指摘を受けて推敲しました。これで、建設途中というのが伝わるでしょうか?」と作者のコメント。
霧や靄で半分しか見えない? と誤読される可能性が高いのではないかと。
「第69回『日本最古のビアホール』〈梅雨明けやスカイツリーはまだ半分〉で、半分の状況が曖昧とのご指摘を受けて推敲しました。これで、建設途中というのが伝わるでしょうか?」と作者のコメント。
霧や靄で半分しか見えない? と誤読される可能性が高いのではないかと。


稲妻に犬の咆哮風車舞う
ひーじい
夏井いつき先生より
「稲妻」と「犬の咆哮」の取り合わせだけでも、一句になるだけの十分な材料が調っています。どうしても「風車」も取り合わせたいということならば、「舞う」という動詞だけは一考しましょう。
「稲妻」と「犬の咆哮」の取り合わせだけでも、一句になるだけの十分な材料が調っています。どうしても「風車」も取り合わせたいということならば、「舞う」という動詞だけは一考しましょう。


冷気満つ銀山出でて夏の雲
寺田 美登里
夏井いつき先生より
「先日、生野銀山を見学しました。暗い中から出てきたときの、夏空がまぶしかったのです」と作者のコメント。
「満つ」は終止形なので、ここで意味が切れます。「銀山」に意味を繋げたいのであれば、「満つる」と連体形にする必要があります。別のやり方を探るとすれば、「銀山の冷気」として「満つ」を外してしまうのも一手です。
「満つ」は終止形なので、ここで意味が切れます。「銀山」に意味を繋げたいのであれば、「満つる」と連体形にする必要があります。別のやり方を探るとすれば、「銀山の冷気」として「満つ」を外してしまうのも一手です。


悠然と風車回りし夏の空
数哩
夏井いつき先生より
「東北旅行でドライブしていたら、ゆっくり風車が回っている風力発電を突然見たのですが、真っ青な空に、銀色に輝いていて印象に残りました」と作者のコメント。
「悠然と風車」とあれば、ほとんどの人が、悠々と回っている風車を想像すると思われます。
「悠然と風車」とあれば、ほとんどの人が、悠々と回っている風車を想像すると思われます。


海の日の夜にブレードの水浸き啼く
けら
夏井いつき先生より
少々材料が多いかと。単語一つ一つに、言葉の優先順位をつけてみましょう。


風渡る馬小屋だった芒原
田畑 整
夏井いつき先生より
「馬小屋だった」から「芒原」へ。その広さの展開に、少々戸惑いました。


フクシマやすずめ戯むる芒の穂
高山佳風
夏井いつき先生より
「原句は〈穂芒へすずめたはむる廃炉の地〉でした。句友より、『廃炉の地』は説明的、具体的な地名を入れたほうが良い、と指摘されました。下五は、私も引っ掛かっていたので、推敲してみました」と作者のコメント。
上五を「フクシマや」と詠嘆することで、一句のテーマが強く押し出されますね。気になるのは「戯むる」でしょうか。例えば、「穂芒に雀」とすれば、その雀の様子は映像として想像できるのではないでしょうか。
上五を「フクシマや」と詠嘆することで、一句のテーマが強く押し出されますね。気になるのは「戯むる」でしょうか。例えば、「穂芒に雀」とすれば、その雀の様子は映像として想像できるのではないでしょうか。


陽炎や白壁の家他人めく
辻 さつき
夏井いつき先生より
「第67回『城下町の白壁』ハシ坊〈陽炎の白壁類縁無き家〉の推敲です。同じ言葉のままで行き詰まり、『類縁無き』を変え、形を変えました」と作者のコメント。
良い方向に推敲できていますよ。あとは、中七下五の語順を逆にすると、人選です。
添削例
陽炎や他人めく白壁の家
「第67回『城下町の白壁』ハシ坊〈陽炎の白壁類縁無き家〉の推敲です。同じ言葉のままで行き詰まり、『類縁無き』を変え、形を変えました」と作者のコメント。
良い方向に推敲できていますよ。あとは、中七下五の語順を逆にすると、人選です。
添削例
陽炎や他人めく白壁の家


胡弓鳴る夜の草原虫すだく
智幸子
夏井いつき先生より
「夜、夫と福岡県・皿倉山頂に胡弓のコンサートに行きました」と作者のコメント。
「胡弓為る」に対して、聴覚の季語「虫すだく」を取り合わせることの、損得がそれぞれあるかと。悩ましい判断です。
「夜、夫と福岡県・皿倉山頂に胡弓のコンサートに行きました」と作者のコメント。
「胡弓為る」に対して、聴覚の季語「虫すだく」を取り合わせることの、損得がそれぞれあるかと。悩ましい判断です。


鬼神めくウインドファーム星月夜
唯野音景楽
夏井いつき先生より
「自宅から見える稜線の風力発電群は、夜になると『もののけ姫』に登場するシシ神のように見えることがあります。鬼神が現れたようです。季語は風車、オランダ、ゴッホの流れで、『星月夜』にしました。風力発電のブレードに、星空がうねる様子とゴッホの星月夜が重なりました」と作者のコメント。
上五中七を大事にしたいのであれば、季語は動くような気がします。
「自宅から見える稜線の風力発電群は、夜になると『もののけ姫』に登場するシシ神のように見えることがあります。鬼神が現れたようです。季語は風車、オランダ、ゴッホの流れで、『星月夜』にしました。風力発電のブレードに、星空がうねる様子とゴッホの星月夜が重なりました」と作者のコメント。
上五中七を大事にしたいのであれば、季語は動くような気がします。


喘鳴の背妣(ひ)にさすられ芒の穂
くるすてぃーぬ
夏井いつき先生より
生死を行き来する虚の世界。描こうとしている内容は理解できます。ただ、六・六・五の調べ、「妣(はは)」ではなく「妣(ひ)」と読ませる意図、「さすられ」から「芒の穂」へ繋がる展開の是非など、細かいところが気になります。例えば……こんな語順では、作者が表現したいニュアンスに障りますか。
添削例
妣(はは)さする喘鳴の背や芒原
生死を行き来する虚の世界。描こうとしている内容は理解できます。ただ、六・六・五の調べ、「妣(はは)」ではなく「妣(ひ)」と読ませる意図、「さすられ」から「芒の穂」へ繋がる展開の是非など、細かいところが気になります。例えば……こんな語順では、作者が表現したいニュアンスに障りますか。
添削例
妣(はは)さする喘鳴の背や芒原


八千草は風を聴き風は成り行く
富永三紀
夏井いつき先生より
「八千草は風を聴き」は、素敵なフレーズだと思います。「風は成り行く」の部分の解釈を迷いました。
「八千草は風を聴き」は、素敵なフレーズだと思います。「風は成り行く」の部分の解釈を迷いました。


鈴虫と風発電が競演す
老蘇Y
夏井いつき先生より
「愛を歌う鈴虫の高音と、経済を興す風力発電の低音を、今と昔の羽根の音として比較してみました」と作者のコメント。
「競演す」と擬人化してしまうのは、安易な展開。どんな様子を見聞きしたから、「競演す」という感想を持ったのか。そこを描写することを考えてみましょう。
「愛を歌う鈴虫の高音と、経済を興す風力発電の低音を、今と昔の羽根の音として比較してみました」と作者のコメント。
「競演す」と擬人化してしまうのは、安易な展開。どんな様子を見聞きしたから、「競演す」という感想を持ったのか。そこを描写することを考えてみましょう。



