写真de俳句の結果発表

第71回「芒野と風車」《ハシ坊と学ぼう!⑫》

ハシ坊 NEW

第71回のお題「芒野と風車」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

恐山くるくる回る風車

京都さくら

夏井いつき先生より
「母のことがあった後、テレビで恐山のことを取り上げていました。風車がいっぱい回っていました。思わず母が亡くなる直前の光景を思い出しました」と作者のコメント。

句としては出来ているのですが、恐山のこの光景は印象的ですので、類句がある可能性は否定できません。
“ポイント”

国境に立ちて隣のススキ見る

遊川百日紅

夏井いつき先生より
季語として使う場合、カタカナ書きに特別な意図がな限りは、「芒」「薄」「すすき」などの表記が推奨されます。
“ポイント”

陽を分かつ一期の蛇やレンズ引く

山田季聴

夏井いつき先生より
「蛇が日向ぼっこをしている山道。広角レンズでそっと寄り、静かに身を引いてお別れします」と作者のコメント。

句材が少々多すぎます。言葉の優先順位を考えてみましょう。
“ポイント”

真赭の芒きみいなくともいくるたのしく

源早苗

夏井いつき先生より
「昨年(2025年)、大好きな旦那さんを亡くした妹ですが、仕事も再開し、友達も作り自分の人生を生きています。わが妹ながらカッコいい女だなと内心思っています」と作者のコメント。

「きみいなくとも」から「いくるたのしく」までの流れが、少々散文的な展開になってしまいました。せっかくの妹さんへのエールの一句。是非、良きものに仕上げて下さい。
“ポイント”

春の航巨大風車と羊群

たけ

夏井いつき先生より
「イギリス旅行で、バスからの車窓をそのまま詠んでみました」と作者のコメント。

この句はこの句として成立しているのですが、「春の航」は、船か飛行機による春の旅ではないかと。
“ポイント”

懐手の三船の闊歩風速十

光猫ふう

夏井いつき先生より
「風力発電には、風速12~15m/sが適しているそうです。九州電力が示す風の強さの目安では、この風速は『大枝が動く。電線が鳴る。傘は差しにくい』『樹木全体が揺れる。風に向かっては歩きにくい』程度だそうです。お題から、三船敏郎の浪人姿を想像しました。三船が普通に歩けるのは、風速5m/sの『砂ぼこりが立ち、紙片が舞い上がる。小枝が動く』程度かと。下五を『風速十』として、強い三船を思いました」と作者のコメント。

上五中七の「三船」と下五「風速十」が、脳の中で繋がりにくいというか……企みすぎたというか。
“難しい”

秋風とたはむるる日も風車

心寧 侑也(ここね ゆうや)

夏井いつき先生より
下五は「風車(かざぐるま)」と読ませるのでしょうか。「かざぐるま」は春の季語になりますね。
“ポイント”

芒野はエイが砂底を這うように

山城道霞

夏井いつき先生より
やろうとしていることには強い共感を覚えます。「~を這うように」がベストかどうか。悩ましいところです。
“難しい”

登頂の弁当開けるなり緑雨

ヒロヒ

夏井いつき先生より
「第65回『バスからの眺め』《並》⑥〈山頂の午後一時半竜天に〉、第68回『監視カメラに鵜』《ハシ坊と学ぼう!⑬》〈登頂の箱開けるなり竜天に〉を推敲しました。『竜天に』に、雨という情報は入っていませんとのコメントをいただくまで、完全に誤解してました。今回は、中七下五を『弁当開けるなり緑雨』と句またがりにすることで、雨の突然感を演出し、さらに、その雨が緑雨だった、と季語を主役に立てたつもりです」と作者のコメント。

「登頂の」を「登頂に」とすれば、人選です。
“ポイント”

夜を騙すのにリアクションなき風車

那乃コタス

夏井いつき先生より
「リアクションのある風車、つまり、カラカラよく回る風車なら、夜をも騙せると思いました」と作者のコメント。

やりたいことは分からないではない、のですが、「~のに」という叙述、「リアクションなき」という描写には、改善の余地がありそうです。
“難しい”

風力発電風よ来ひ来ひ芒原

みさ

夏井いつき先生より
「来る」は、カ行変格活用の動詞ですので、「来ひ」という表記にはなりません。
“ポイント”

帰路に見る風車は映画と夕焼まぜ

さくさく菫

夏井いつき先生より
「要素が多いのはわかっているのですが、私の身近にある風車の丘は国道沿いにあり、映画帰りのイメージが強く、こうなりました」と作者のコメント。

「要素が多いのはわかっている」ということは、ゆっくりと俳句の筋肉がつき始めているのですね。十七音の器に盛るには、季語とあと一つの要素ぐらいが、ちょうどよい分量。句材を切り分けて、一句一句の季語を主役にする練習を意識的にやっていきましょう。ここからが、俳筋力の本格的なトレーニングになります。
“ポイント”

自然を見ず自然のと言ふ乱れ草

かみん

夏井いつき先生より
「風力発電にしても太陽光発電にしても、本来の自然が失われていくのは悲しいです」と作者のコメント。

上五中七は、俳句というよりは、主張というべき言葉です。俳句は描写。風力発電や太陽光発電の現場を描写することで、作者の思いを読者に伝える。それを実現させるために、私たちは俳句の筋肉を鍛えていきましょう。
“参った”

キホーテの雄叫び聞こゆ乱れ草

桃圓

夏井いつき先生より
「亡父は画家でしたが、スペイン旅行のおりに見た、粉ひき小屋の風車を題材に数点の作品を残しています。今回の兼題写真を思わせる構図で、手前に荒野を描いています。そこから『ドン・キホーテ』の物語を連想して作句しました。『ドン・キホーテ』のままだと有名な店舗があり、音数も長いので『キホーテ』と略しました。適切だったかどうか、心配です」と作者のコメント。

上五字余りにしても「ドン・キホーテ」とした方が宜しいかと。敢えて、この季語のこの傍題にしたことがベストか否か。一考する余地はありそうです。
“参った”

ぎいぎいと風車の鈍く野分かな

今 結月

夏井いつき先生より
描こうとしている光景は良いですね。語順も含めて、「鈍く」とすることの是非も考えてみてください。
“参った”