第56回「百日紅の名所」《ハシ坊と学ぼう!⑧》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
愛でり来て御神籤の小言花疲れ
晴芽みやび
夏井いつき先生より
「愛でり」という表現には違和感。動詞「愛づ」に、完了の助動詞「り」は接続しないのでは。
「愛でり」という表現には違和感。動詞「愛づ」に、完了の助動詞「り」は接続しないのでは。


つくばいや夏の青空閉じ込めて
ふぃーかふぃか
夏井いつき先生より
「お茶室の前のつくばいの水盤に、夏の青空と白い雲が映っているのが美しかったです」と作者のコメント。
下五の描写がややありがちです。ここをもう一工夫。
下五の描写がややありがちです。ここをもう一工夫。


言われなき中傷排ガスの百日紅見上る
にゃんちゅう
夏井いつき先生より
今回の投句二句、どちらも材料が多すぎます。自立語を一つ、二つ減らしてみましょう。
今回の投句二句、どちらも材料が多すぎます。自立語を一つ、二つ減らしてみましょう。


百日紅の瘤(こぶ)麒麟のような影
天亨
夏井いつき先生より
「毎年百日紅の葉が落ちた頃、枝切りする所が大きくなって、まるで麒麟の頭のように影が見えドキッとします。枝によってまちまちの形です」と作者のコメント。
目の付け所はいいですね。あとは、描写の精度をあげたいところです。
「毎年百日紅の葉が落ちた頃、枝切りする所が大きくなって、まるで麒麟の頭のように影が見えドキッとします。枝によってまちまちの形です」と作者のコメント。
目の付け所はいいですね。あとは、描写の精度をあげたいところです。


マフラーや黄ばみし信のまろき文字
てんむす
夏井いつき先生より
「第28回『アルパカの後ろ姿』の〈マフラーは手編み箪笥の奥底に〉の推敲句です。中学生で初めてもらったプレゼントが、手編みのマフラーでした。『手編み』と説明しなくても、描写で読み手に『手編み』だと想像してもらえるように描いた方が良いと思いました。『黄ばみし信』で古くなった手紙を表現して、『まろき文字』で女学生の丸文字、それで手編みのマフラーを想像してもらえたらと思って推敲しました」と作者のコメント。
「マフラーや」と切れがあるので、中七下五によって、マフラーが手編みであること想像してもらう……のは、少々無理があります。「黄ばみし信」という表現も、少々分かり難いです。
「第28回『アルパカの後ろ姿』の〈マフラーは手編み箪笥の奥底に〉の推敲句です。中学生で初めてもらったプレゼントが、手編みのマフラーでした。『手編み』と説明しなくても、描写で読み手に『手編み』だと想像してもらえるように描いた方が良いと思いました。『黄ばみし信』で古くなった手紙を表現して、『まろき文字』で女学生の丸文字、それで手編みのマフラーを想像してもらえたらと思って推敲しました」と作者のコメント。
「マフラーや」と切れがあるので、中七下五によって、マフラーが手編みであること想像してもらう……のは、少々無理があります。「黄ばみし信」という表現も、少々分かり難いです。


百日紅解体工事の遅延詫び
はまちこ
夏井いつき先生より
着地の動詞を「詫ぶ」とすれば、人選です。


三菱はKIRIN八月は百日紅
柿司 十六
夏井いつき先生より
「三菱系の食事会では、必ずキリンビールが出されると聞きました。八月ならば百日紅がなければならないと思いました。企業名2つに季語2つという盛り沢山なのは理解していますが、百日紅ならばそれを受け止めれるのではなかろうかと思いました」と作者のコメント。
色々と意欲的な試みであることは理解します。が、前半「三菱はKIRIN」という措辞で、「三菱系の食事会では必ずキリンビールが出される」とまでは読み解けません。
「三菱系の食事会では、必ずキリンビールが出されると聞きました。八月ならば百日紅がなければならないと思いました。企業名2つに季語2つという盛り沢山なのは理解していますが、百日紅ならばそれを受け止めれるのではなかろうかと思いました」と作者のコメント。
色々と意欲的な試みであることは理解します。が、前半「三菱はKIRIN」という措辞で、「三菱系の食事会では必ずキリンビールが出される」とまでは読み解けません。


百日紅季題で気づく庭の隅
惠桜改め さーやのママ
夏井いつき先生より
これは報告。庭の隅の木が百日紅と分かったのですから、それを観察して描写してみましょう。
これは報告。庭の隅の木が百日紅と分かったのですから、それを観察して描写してみましょう。


朝まだきユダ此処に見ゆ花蘇芳
須月かほう
夏井いつき先生より
「ユダ」と「花蘇芳」は、意欲的な取り合わせです。ただ「此処に見ゆ」という表現がこなれていない感じです。まだ、佳くなる余地がある一句。
「ユダ」と「花蘇芳」は、意欲的な取り合わせです。ただ「此処に見ゆ」という表現がこなれていない感じです。まだ、佳くなる余地がある一句。


サイダーやスコア手書きのボウリング場
咲山ちなつ
夏井いつき先生より
「第46回『深夜のドライブイン』の並選句〈夏休み手書きのボウリングのスコア〉の推敲句です。コンピューターボウルを導入しない田舎のボウリング場の事を詠みたかったので、季語と中七下五の表現を変えてみました。このボウリング場、父の勤務先であり思い出の詰まった場所です。数年前に閉業し建物も取り壊されましたが、俳句にして残しておきたいと思っています。表現がまだ研ぎすまされていないでしょうか……」と作者のコメント。
上五を「サイダーや」としたのは、佳き推敲です。お父さんの思い出のあるボウリング場だから、「場」と書きたいお気持ちはよく分かります。が、作品として考えた時に、調べが弛みます。
添削例
サイダーやスコア手書きのボウリング
「第46回『深夜のドライブイン』の並選句〈夏休み手書きのボウリングのスコア〉の推敲句です。コンピューターボウルを導入しない田舎のボウリング場の事を詠みたかったので、季語と中七下五の表現を変えてみました。このボウリング場、父の勤務先であり思い出の詰まった場所です。数年前に閉業し建物も取り壊されましたが、俳句にして残しておきたいと思っています。表現がまだ研ぎすまされていないでしょうか……」と作者のコメント。
上五を「サイダーや」としたのは、佳き推敲です。お父さんの思い出のあるボウリング場だから、「場」と書きたいお気持ちはよく分かります。が、作品として考えた時に、調べが弛みます。
添削例
サイダーやスコア手書きのボウリング


紅の掃くをためらふ百日紅
峠の泉
夏井いつき先生より
「真紅の百日紅が一面に散っていますが、そのままにしておきたい美しさです。最初は『紅』を『鴇色』としたのですが、トキの羽が美しいのは十月以降と知り、使うのをやめました。細部まで季節を合わせた方が良いような気がしましたが、如何でしょうか?」と作者のコメント。
「鴇色」は、色の種類ですから、そこまで拘る必要はないでしょう。むしろ、美しい花びらを「掃くのをためらう」という句は、かなりあります。ここの部分の描写を工夫する方が、先決問題です。
「真紅の百日紅が一面に散っていますが、そのままにしておきたい美しさです。最初は『紅』を『鴇色』としたのですが、トキの羽が美しいのは十月以降と知り、使うのをやめました。細部まで季節を合わせた方が良いような気がしましたが、如何でしょうか?」と作者のコメント。
「鴇色」は、色の種類ですから、そこまで拘る必要はないでしょう。むしろ、美しい花びらを「掃くのをためらう」という句は、かなりあります。ここの部分の描写を工夫する方が、先決問題です。


百日紅三味線稽古の爪痛む
千舟
夏井いつき先生より
「百日紅は、花の時期が長いそうです。三味線のお稽古も同じように長い時間をかけてするのですが、糸を押さえると爪が割れてとにかく痛みます。中七がどうしても八音になってしまいます。『の』は無くても良いのでしょうか?」と作者のコメント。
中七は極力七音にするのが定石です。この句の場合は、「稽古」と説明する必要はなさそうですし、「痛む」より「割れる」という映像を書いてみましょうか。
〈三味線の爪割れ百日紅○○○〉
最後の三音で、季語を描写してみましょう。
中七は極力七音にするのが定石です。この句の場合は、「稽古」と説明する必要はなさそうですし、「痛む」より「割れる」という映像を書いてみましょうか。
〈三味線の爪割れ百日紅○○○〉
最後の三音で、季語を描写してみましょう。


百日紅『マイブック』買う丸善に
雪花
夏井いつき先生より
「丸善で『マイブック』を買ったのですが、『丸善で』にすると散文的かと思い、『丸善の』『丸善に』のどちらにしようか考えて、『丸善に』としましたが、これで伝わるのか、文法として合っているのか、なんだかすわりが良くない気がする、などとモヤモヤしながら投稿しています」と作者のコメント。
中七下五の語順を替えてみましょう。
添削例
百日紅丸善に買う「マイブック」
「丸善で『マイブック』を買ったのですが、『丸善で』にすると散文的かと思い、『丸善の』『丸善に』のどちらにしようか考えて、『丸善に』としましたが、これで伝わるのか、文法として合っているのか、なんだかすわりが良くない気がする、などとモヤモヤしながら投稿しています」と作者のコメント。
中七下五の語順を替えてみましょう。
添削例
百日紅丸善に買う「マイブック」


東窓朝日浴びるや花蘇芳
さち緖
夏井いつき先生より
「朝日」とあれば、「浴びる」は不要です。「花蘇芳」の描写に音数を使ってみましょう。
「朝日」とあれば、「浴びる」は不要です。「花蘇芳」の描写に音数を使ってみましょう。


夫の急逝満開の庭の躑躅
鈴木 リク
夏井いつき先生より
せっかくの追悼句ですから、描写はシンプルに、心は深く。「庭」という情報は不要です。
添削例
満開の躑躅や夫の急逝す
せっかくの追悼句ですから、描写はシンプルに、心は深く。「庭」という情報は不要です。
添削例
満開の躑躅や夫の急逝す


百日紅終の住処に咲き零る
南全星びぼ
夏井いつき先生より
「百日紅」は、まさに咲き続き「咲き零る」という印象の花です。となれば、下五が必要なのかどうか。その点を一考することで、全体の展開が変わってきます。
「百日紅」は、まさに咲き続き「咲き零る」という印象の花です。となれば、下五が必要なのかどうか。その点を一考することで、全体の展開が変わってきます。

