第59回「色っぽい流木」《ハシ坊と学ぼう!⑩》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
父の忌よ「寅さん」を観る秋の夜
林としまる
夏井いつき先生より
「第34回『ホーチミンの市場』に投句した〈父の忌や寅さん秋の啖呵売〉が伝わればいいなと思い、詠みました。上五と下五を入れ替えようかと迷いましたが、何度も読誦して、調べが良いと思い、この句になりました」と作者のコメント。
調べという意味では、こんな展開も可能です。お好きな方で。
添削例
「寅さん」を観る父の忌よ秋の夜よ
「第34回『ホーチミンの市場』に投句した〈父の忌や寅さん秋の啖呵売〉が伝わればいいなと思い、詠みました。上五と下五を入れ替えようかと迷いましたが、何度も読誦して、調べが良いと思い、この句になりました」と作者のコメント。
調べという意味では、こんな展開も可能です。お好きな方で。
添削例
「寅さん」を観る父の忌よ秋の夜よ


足裏の砂くずしゆく夏の海
桜貝
夏井いつき先生より
中七を生かすとすれば、下五は「夏の波」となるでしょうし、「足裏の砂」と「夏の海」を取り合わせたいのならば、中七は一考の余地があります。


1人来て彼方の雲の峰真白
西 メグル
夏井いつき先生より
俳句では、特別な意図がない限りは漢数字を使うのが定石です。


土用凪彼の鎖骨の海へ指
理恵にゃん
夏井いつき先生より
中七下五のフレーズに対して、この季語がベストかどうか。再考の余地がありそうです。
中七下五のフレーズに対して、この季語がベストかどうか。再考の余地がありそうです。


笑こぼるる尼僧の法話百日紅
杜野みやこ
夏井いつき先生より
「第56回『百日紅の名所』〈笑みこぼる尼僧の法話百日紅〉の推敲句です。上五を連体形の字余りとしましたが、字余りの句は躊躇いがあって今まで作っていませんでした。もう少し自然体で字余りの句も詠んでみたいのですが。それには俳筋力でしょうか」と作者のコメント。
上五の字余り云々の問題というよりは、上五の書き方がベストかどうかという判断になります。「尼僧の法話」と「百日紅」の取り合わせは良いと思います。
「第56回『百日紅の名所』〈笑みこぼる尼僧の法話百日紅〉の推敲句です。上五を連体形の字余りとしましたが、字余りの句は躊躇いがあって今まで作っていませんでした。もう少し自然体で字余りの句も詠んでみたいのですが。それには俳筋力でしょうか」と作者のコメント。
上五の字余り云々の問題というよりは、上五の書き方がベストかどうかという判断になります。「尼僧の法話」と「百日紅」の取り合わせは良いと思います。


夕凪や足湯で仰ぐ昼の月
骨の熊猫
夏井いつき先生より
「足湯に」とすれば人選です。


夕凪に美し肌の流木よ
周子(ちかこ)
夏井いつき先生より
「美し」が「肌」に掛かるのならば「美しき」と連体形になります。
「美し」が「肌」に掛かるのならば「美しき」と連体形になります。


ビーチパラソル立てて流木ぶっ刺す子
赤尾双葉
夏井いつき先生より
「こんな色っぽい流木があったら子供なら刺すかなと思って(^^)。漢字は敢えて「挿す」にせず「刺す」にしました」と作者のコメント。
「流木ぶっ刺す子」というフレーズは面白いです。ただ、「~立てて」という動作と、「ぶっ刺す」動作がどう繋がるのか? あるいは、繋がらないのか? 句意が読み取りにくいきらいがあります。季語そのものが動くのかもしれません。
「こんな色っぽい流木があったら子供なら刺すかなと思って(^^)。漢字は敢えて「挿す」にせず「刺す」にしました」と作者のコメント。
「流木ぶっ刺す子」というフレーズは面白いです。ただ、「~立てて」という動作と、「ぶっ刺す」動作がどう繋がるのか? あるいは、繋がらないのか? 句意が読み取りにくいきらいがあります。季語そのものが動くのかもしれません。


流木に生まれ恥辱の日の盛
麦のパパ
夏井いつき先生より
「生まれ変わって〇〇になった、といった句は、特に今回は多いかもしれませんが……。お題の機知を活かしたく(笑)」と作者のコメント。
「流木に生まれ」と「日の盛」の取り合わせは良いです。「恥辱の」が少々安易な展開。ここが、成否の肝となりそうです。
「生まれ変わって〇〇になった、といった句は、特に今回は多いかもしれませんが……。お題の機知を活かしたく(笑)」と作者のコメント。
「流木に生まれ」と「日の盛」の取り合わせは良いです。「恥辱の」が少々安易な展開。ここが、成否の肝となりそうです。


神生まる海が海月の国のこと
伊沢華純
夏井いつき先生より
「第33回『漂うミズクラゲ』《並》④〈むかしむかし海が海月の国のこと〉の推敲句です」と作者のコメント。
「海が海月の国のこと」は、海が(海中にある)海月の国のこと(を語る)? というような意味なのでしょうか。句意が少々読み取りがたいきらいがあります。
「第33回『漂うミズクラゲ』《並》④〈むかしむかし海が海月の国のこと〉の推敲句です」と作者のコメント。
「海が海月の国のこと」は、海が(海中にある)海月の国のこと(を語る)? というような意味なのでしょうか。句意が少々読み取りがたいきらいがあります。


いにしへの木乃伊に会ひに夏休み
雨野雀雨
夏井いつき先生より
「国立科学博物館に江戸時代の女性の木乃伊(ミイラ)があるそうです。ぜひ、会いに行ってみたいものです」と作者のコメント。
「木乃伊」とあれば、「いにしへ」であろうと想像はつきます。ここを再考すれば、すぐに人選になりそうな句材です。
「国立科学博物館に江戸時代の女性の木乃伊(ミイラ)があるそうです。ぜひ、会いに行ってみたいものです」と作者のコメント。
「木乃伊」とあれば、「いにしへ」であろうと想像はつきます。ここを再考すれば、すぐに人選になりそうな句材です。


ピンボール跳ねる選挙も台風も
宮康平
夏井いつき先生より
「ピンボール」と「台風」の取り合わせは、いけそうです。「選挙も」という要素を外して、一句を整えてみましょう。


流木にきじのはくせい夏座敷
律
夏井いつき先生より
「亡き父が猟友会で鉄砲を撃っていたころの雉のはく製は、釣りずきの父が見つけてきた流木の上に、そのままあり続けます」と作者のコメント。
季語「夏座敷」は、涼しく誂えた座敷というのが本意です。単なる、夏の季節の座敷ではないことを踏まえて、再考してみましょう。
「亡き父が猟友会で鉄砲を撃っていたころの雉のはく製は、釣りずきの父が見つけてきた流木の上に、そのままあり続けます」と作者のコメント。
季語「夏座敷」は、涼しく誂えた座敷というのが本意です。単なる、夏の季節の座敷ではないことを踏まえて、再考してみましょう。


太陽が夕焼けになりし地平線
葉月庵郁斗
夏井いつき先生より
今、目の前で「夕焼け」になっているというニュアンスならば、中七は「夕焼となる」と書くべきかと。
今、目の前で「夕焼け」になっているというニュアンスならば、中七は「夕焼となる」と書くべきかと。


六十路にも波に浮き輪は愉しけり
ふづきかみな
夏井いつき先生より
「愉しけり」は文法的に問題があります。「愉し」と終止形で言い切るか、「愉しき浮き輪」と連体形にするか。語順を一考してみましょう。
「愉しけり」は文法的に問題があります。「愉し」と終止形で言い切るか、「愉しき浮き輪」と連体形にするか。語順を一考してみましょう。


花眼かな薄くなりけり頬の沁み
モト翠子
夏井いつき先生より
「かな」「けり」と切字が重複して、三段切れになりました。どちらかを外して、全体を整えましょう。
「かな」「けり」と切字が重複して、三段切れになりました。どちらかを外して、全体を整えましょう。


屯せる水着に半裸コンビニに
理佳おさらぎ
夏井いつき先生より
語順が惜しいです。
添削例
コンビニに屯せる水着と半裸
語順が惜しいです。
添削例
コンビニに屯せる水着と半裸


余花を挿す画廊で求めし流木
桐山はなもも
夏井いつき先生より
「二十数年前、たまたま通りかかった小さな画廊で造形作品としての流木を買いました。元々の自然な形を活かしたもので、今でも部屋に飾ってあります。語順を入れ替えてみたり、上五を『余花挿すや』と切ってみたりいろいろしてみたのですが、確信をもって余花を挿したのではなく、流木を眺めているうちに余花を挿してみようと思ったという気分を表すには、中八の十七音になってしまいますが、この方が合ってるかと思いました」と作者のコメント。
時間軸を長く切り取りすぎています。「画廊で求めし」から書くのではなく、現在「流木」に「余花」を挿しているその光景を描写しましょう。
「二十数年前、たまたま通りかかった小さな画廊で造形作品としての流木を買いました。元々の自然な形を活かしたもので、今でも部屋に飾ってあります。語順を入れ替えてみたり、上五を『余花挿すや』と切ってみたりいろいろしてみたのですが、確信をもって余花を挿したのではなく、流木を眺めているうちに余花を挿してみようと思ったという気分を表すには、中八の十七音になってしまいますが、この方が合ってるかと思いました」と作者のコメント。
時間軸を長く切り取りすぎています。「画廊で求めし」から書くのではなく、現在「流木」に「余花」を挿しているその光景を描写しましょう。


美人画の腰巻きゆらら夏の浜
独楽
夏井いつき先生より
「美人画の(ような)腰巻き(姿)」という意味なのでしょうが、実際の「美人画の(中に描かれた)腰巻き(姿の人物)」と読まれる可能性が十分あります。そうなると、下五の季語「夏の浜」も絵の中の光景だと読まれてしまうかも。
「美人画の(ような)腰巻き(姿)」という意味なのでしょうが、実際の「美人画の(中に描かれた)腰巻き(姿の人物)」と読まれる可能性が十分あります。そうなると、下五の季語「夏の浜」も絵の中の光景だと読まれてしまうかも。


空(から)ばかり寄する水際(みぎわ)や秋の浜
立石神流
夏井いつき先生より
「秋の浜の波打ち際は、中身のなくなった物や人が引き寄せられるイメージで詠みました」と作者のコメント。
「空(から)」とルビがありますが、このルビをなくしても句意が読み取れるような工夫が欲しいところです。
「秋の浜の波打ち際は、中身のなくなった物や人が引き寄せられるイメージで詠みました」と作者のコメント。
「空(から)」とルビがありますが、このルビをなくしても句意が読み取れるような工夫が欲しいところです。


ぎょつとして目上げた吾に桃の尻
イケダエツコ
夏井いつき先生より
「桃の尻」とは、実際の桃なのか。比喩なのか。読み取りがたいのが難点です。
「桃の尻」とは、実際の桃なのか。比喩なのか。読み取りがたいのが難点です。

