写真de俳句の結果発表

第60回「双子のようなペンギン」《ハシ坊と学ぼう!②》

ハシ坊 NEW

第60回のお題「双子のようなペンギン」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

季重なり

日盛りに双子めく首涼し館

永順

季重なり

炎暑より逃れ水族館涼し影

永順

夏井いつき先生より
「二句とも、暑い外と涼しい水族館の対比です。ペンギンは双子のように私の動きや鏡の反射を追って首を振り、とても可愛く癒されました」と作者のコメント。

二句ともに、「涼し館」「涼し影」のような使い方がされていますが、どちらの「涼し」も、「館」「影」に掛かっていくようですので、「涼しき」と連体形にする必要があります。更に、「涼し」に加え、「日盛り」も「炎暑」も季語ですので、その点も含めて再考してみましょう。
“参った”

君逝きぬとき秋の星煌めけリ

秋月あさひ

弟逝く秋の星煌めきけり

秋月あさひ

夏井いつき先生より
「8月18日深夜、弟が亡くなったという知らせがありました。その夜、星がいつになくはっきり見えて周囲がキラキラしていました」と作者のコメント。

弟さんへの追悼。二句を合体させてみましょうか。

添削例
秋の星煌めく弟逝きしとき
“ポイント”

獣苑のペンギンの眼に立つ海市

亘航希

夏井いつき先生より   評価    人 
「ペンギンの眼に立つ海市」が作者の伝えたいことだとすれば、上五「獣苑の」でも人選には入りますが、作品を更に結球させるとすれば、この上五が勝負所になります。私なら「○○○○や」と詠嘆するかな。
“ポイント”

デパートの手土産ずしり夏衣

朱葉

夏井いつき先生より   評価    人 
第58回『趣味は機織』〈あの柄の袋の中は水ようかん〉の推敲句です。推敲の宿題をいただいたのは初めてで嬉しくて、『デパートで買う水ようかんをお土産に持ってくるお客様』が見える句をひたすら考えました。季語の『水ようかん』を外し、お客様を季語で表したら、一字も同じではない句になりましたが、改めて俳句の面白さを感じると共に、今度は水ようかんが見える句なのか気になるので、引き続きハシ坊希望です」と作者のコメント。

「季語」を替えると、一句の表情は愕然と変わります。「デパートの」の句は、これはこれで成立しています。人選になります。次は、「水羊羹」を主役とした句に挑んでみて下さい。
“ポイント”

片足の犬の置物東北忌

八一九

夏井いつき先生より   評価    人 
「震災で片足が欠けた陶器の犬を、母は今でも大事に飾っています。歳時記には『東日本大震災の日』『東日本大震災忌』『三月十一日』はありますが、『東北忌』は載っていませんでした。いつか『東北忌』が歳時記に載ればなと思います」と作者のコメント。

この句そのものは人選でよいのですが、季語「東北忌」について一言。神戸の震災があった後にも似たような議論があったのですが、「神戸忌」という使い方は、まるで神戸が亡くなったようで受け入れにくいという声が上がったのです。似たような理由で「東北忌」という言葉を受け入れ難く思う人もいらっしゃるのではないか。そういう意味で歳時記では、「東日本大震災の日」「東日本大震災忌」「三月十一日」を季語としているのだろうと推測します。
“ポイント”

ペンギンの小さきことよ夏日記

矢車のえ

夏井いつき先生より
「実物は、思っていたよりちぃーさかったです!」と作者のコメント。

この実感に共感します。ただ、下五「夏日記」という季語の使い方は少々強引です。
“良き”

(京都水族館にて)夏終る狆穴子から離れぬ子

七森わらび

夏井いつき先生より
「狆穴子(チンアナゴ)は体が半分砂に埋まり、エサが流れるくるのを待っているばかり。『夏の果』の傍題『夏終る』という季語は、立秋間近とはいえ暑さが終る気配はないけれど、暑さが終わる安堵感と、長い夏休みが終わる寂しさがまじると歳時記にありました。この子は夏休みの終わりを意識して、狆穴子に果しない憧れを抱いているのではないだろうかと思われました」と作者のコメント。

チンアナゴという生き物は、ほんとに見ていて面白いですね。この句の内容からすれば、前書きは不要です。前書きを外した状態で並選。これを人選に引き上げるとすれば、「季語」と「狆穴子」で一句、「季語」と「水槽を離れない子」で一句、と切り分けてみて下さい。
“参った”

椋鳥や阿吽の世界は影を編む

帷子川ソラ

夏井いつき先生より
中七の字余りは気になります。作者の意図と、ニュアンスが変わるのかもしれませんが、以下のようにすれば、人選に採れるのですが。

添削例
椋鳥の阿吽世界は影を編む

「阿吽」の後に、意味上の切れが入ります。

“ポイント”

弟の父に似ぬ声秋まつり

藤村煌永

秋まつり弟の声父に似ぬ

藤村煌永

夏井いつき先生より
「(一句目)年を取るに連れ声も似てきますね。(二句目)推敲し直しました。すみません、こちらが正解かもしれません」と作者のコメント。

似ているのか? 似ていないのか? 似ていないのならば「弟の声父に似ず」とすれば、間違いなく意味が伝わります。似ているのならば「弟の声父に似て」とでもすれば、伝わります。
“参った”

双子分布オムツ干す夏の空

猫日和

夏井いつき先生より   評価    並 
「双子が生まれたのですが、二人とも肌が弱く紙オムツではかぶれてしまい、布オムツを使用していました。その枚数たるや凄まじく、団地に住んでおりましたが、すぐに双子が生まれたと知れ渡りました。七月の青い空に真っ白いオムツが綺麗でした」と作者のコメント。

このままでも並選は確保できるのですが、例えば「干す」と書かなくても、干しているんだろうなと思わせるのが、季語「夏の空」の力です。

添削例
夏空やオムツの数の双子分
“ポイント”

立つたまま眠るペンギン鰯雲

横山雑煮

夏井いつき先生より   評価    並 
「ペンギンは立ったまま数秒寝る、ということを繰り返すそうです。やっと涼しくなってきて、鰯雲を眺めながらご馳走の夢でも見ているのでしょうか」と作者のコメント。

「立ったまま眠る」という特徴を入れた「ペンギン」の句は、幾つかありました。この段階で、並選は確保しているのですが、あとは取り合わせる季語の勝負になってきます。「鰯雲」がベストなのかどうか。悩ましいところです。
“ポイント”

夜学生鞄の中に辞書二冊

茶椅子

夏井いつき先生より   評価    並 
このままで並選までは確保できています。更に、ブラッシュアップするとすれば……「鞄に辞書二冊」と書くだけで、鞄の中に入れていることは分かりますね。余った音数をどう使うか。ここに人選への道があります。
“ポイント”

処暑の風他より目立つ立ち姿

イチゴミルク

夏井いつき先生より
「双子であるだけに目立つ」と作者のコメント。

この書き方だと、どういう理由で「目立つ」のか、想像の糸口がありません。
“参った”

ペンギンの首のばしなく春の月

竹玲

夏井いつき先生より
「のばしなく」は、「伸ばし鳴く」だと思われますが、「鳴く」だけでも漢字にしたほうが、一読で理解しやすくなります。
“良き”

花氷ひそやかに溶く湯葉優し

佐々木棗

夏井いつき先生より
中七下五のフレーズに対して、「花氷」がベストなのか。悩ましいところです。
“ポイント”

ペンギンの胸は夕焼の色を染め

狐狸乃

夏井いつき先生より
「~を染め」は必要でしょうか。
“ポイント”