写真de俳句の結果発表

第60回「双子のようなペンギン」《ハシ坊と学ぼう!⑥》

ハシ坊

第60回のお題「双子のようなペンギン」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

 

愁思かな檻のごりらの目にわたし

北国はな

夏井いつき先生より
「愁思」を「秋思」とすれば、人選です。
“参った”

主なき犬小屋寂し野分の夜

錆鉄こじゃみ

夏井いつき先生より
「犬小屋」と「野分」の取り合わせはよいです。上五「主なき」は、有りがちな言い回し。ここも含めて、再考してみましょう。
“ポイント”

銀杏散るおなじ歯ぬけておなじ笑み

田野こみち

夏井いつき先生より
「娘が幼稚園の年長の時、お友達も同じ上の前歯が抜けてて、双子みたいな笑顔がかわいかったです」と作者のコメント。

中七下五を良しとした時、上五の季語と作者の意図の間に、隙間がありそうです。
“ポイント”

夕立避くアンサンブルのリコーダー

稽古

夏井いつき先生より
第58回の投句〈夕立避く機屋の軒のリコーダー〉を二句に仕立て直してくれました。いい感じになってきてますよ。
「夕立」と「リコーダー」の取り合わせは、良いのです。夕立を避けている場面ですから、中七「アンサンブルの」という説明は損です。この場合は、リコーダーをどう描写するか。そこが、最後のブラッシュアップです。
“ポイント”

風の道見ゆか鵟のホバリング

飯沼深生

夏井いつき先生より
この「見ゆか」ですが、「か」が助詞だとすると、係助詞でも終助詞でも連体形に接続するようです。
み・ゆ【見】〘 自動詞 ヤ行下二段活用 〙+助詞「か」ということならば、「見ゆるか」が正しいのではないかと……。
“ポイント”

季重なり

還暦やかき氷には芋焼酎

三太郎

夏井いつき先生より
「最近高価なかき氷が流行りですが、歳をとると焼酎にぶっかけ氷ですね」と作者のコメント。

上五「還暦や」という思い切った入り方は面白いです。ただ、「かき氷」「焼酎」どちらも季語ですし、作者コメントのような意味には読み取れません。
“良き”

墓参行き転寝急ぎ押すチャイム

モト翠子

夏井いつき先生より
第42回『降車ボタン』の投句〈春眠や老批バス停通過して〉の推敲です。墓参りとは読み取れず、バス停に幽霊の父母が立っていた感じ、とご指摘を受けました。『転寝』と『うたた寝』のどちらを使用するか迷いました」と作者のコメント。

なるほど、季語を「春眠」にするか「墓参」にするか、ここに判断の分かれ目があります。例えば、原句を基本に考えれば〈春眠や墓所のバス停乗り過ごし〉とでも書けば、伝えたいことは伝わります。どちらの季語を立てたいか、自問自答してみましょう。
“参った”

ペンギンや双子の決めて秋暑し

丘るみこ

夏井いつき先生より
「私には、双子か三つ子か分かりません。皆同じで、皆家族のようです」と作者のコメント。

助詞「の」の意味が、ちょっと分かりにくいです。
“ポイント”

鴛鴦のペンギンにして水澄めり

みなごん

夏井いつき先生より
仲が良いということを書きたいのだとは思いますが、上五は無理があります。
“ポイント”

人鳥や結露の向こう抱卵す

のりこ

夏井いつき先生より
「水族館のペンギンが、結露の付いたガラスの向こう側で足の上に卵を乗せていました。こんな所でも抱卵するのだなと驚きました。水族館だと一年中結露ができるので、季語として活きているのか分かりませんが……」と作者のコメント。

上五「ペンギンや」でもよいのではないかと。敢えて「人鳥」にする意図が、ちょっと読み取り難いです。
“ポイント”

ペンギンのヘソ天春霙を告ぐ

深町宏

夏井いつき先生より
句材は面白いと思うのですが、ペンギンのあの体型で「ヘソ天」って可能なの? 個人的な疑問です。
“ポイント”

マフラーなぞ巻いて人鳥来賓す

柿司  十六

夏井いつき先生より
「今回の自らのテーマとして、“季語で遊んでみよう”を掲げています。拙句は“鴻雁来賓す”をペンギンにしてみました。“鴻雁来賓す”は秋なのですが、ペンギンならば、さらに遅れてマフラーをして冬に来るのではと思いました。楽しむ事を考えて気楽に作りました」と作者のコメント。

うーむ……季語と遊ぶことが悪いのではありませんが、まずは句意が読者に伝わらないと、表現としては切ない。
“ポイント”

人鳥や毛皮脱ぎたし猛暑かな

かたばみ

夏井いつき先生より
一句に「や」「かな」を使うと、感動の焦点がブレるということで、嫌われます。どちらかを外すのが、対処法の一つです。
“参った”

剥がれゆく衣一枚海月浮く

谷川ふみ

夏井いつき先生より
「心が疲れている時、海月の映像をよく見ています。普段纏っている様々なものが、剥がれていくような気がして癒されます。『衣のごとき』とするか『衣一枚』とするか、迷いました」と作者のコメント。

なるほど、そういうことを伝えたかったのですね。「剥がれゆく衣一枚」が比喩だということが読み解き難いため、海月の浮いてる突堤かなにかで、衣が剥がれる? と困惑してしまいました。自分の伝えたい内容に、言葉を寄せる作業をしてみましょう。
“良き”

天高し利き手の違う双子かな

サリー

夏井いつき先生より
下五を「かな」と着地させたいのならば、上五は「天高く」となるでしょうし、「かな」が音数合わせでしたら、語順その他も含めて再考することをオススメします。
“ポイント”

柚子飾る双子の姉の腕のタトゥー

咲山ちなつ

夏井いつき先生より
字余りながら中七下五のフレーズを良しとした時、上五の季語はいかようにも動きます。ベストな季語を探してみましょう。
“ポイント”