写真de俳句の結果発表

第60回「双子のようなペンギン」《ハシ坊と学ぼう!⑨》

ハシ坊

第60回のお題「双子のようなペンギン」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

 

老海豚の鎮まる水面寄する人

早霧ふう

夏井いつき先生より
「子供の情操教育にと、毎夏水族館へ通いました。当時海豚ショーで活躍のジム君は、2009年に高齢、白内障で引退。離れのプールで余生を過ごしていました。名を呼ぶと泳ぎを止め浮上、じっとしてました。交感を嬉しく思っていました。22年、会えずに亡くなリました。彼のファンは多かったそうです」と作者のコメント。

上五中七は良いですね。下五は勿体ない。是非、一考して下さい。
“参った”

身に沁むやペンギンカフェのひとりめし

二城ひかる

夏井いつき先生より
「飼育されているペンギンは可愛いけれど、あの姿は生息地に適したものなので、違和感があります。ペンギンカフェで癒されたいけど、寂しさが増してしまった様子を詠みました。今回はペンギンを通して地球温暖化や宇宙や進化等々考えてしまいました。スケールの大きな俳句も詠めるように俳筋力をつけていきます!」と作者のコメント。

「ペンギンカフェ」という素材が面白いのですが、下五「ひとりめし」に対して、季語「身に沁む」がちょっとツキ過ぎ。
「ひとりめし」ではなく「ペンギンカフェ」そのものに違和感をもったのならば、下五を別の表現にすることも一案でしょう。
“ポイント”

父の日のネクタイペンギン柄選る

深草くう

夏井いつき先生より
「ペンギン柄を」とすれば人選です。
“ポイント”

白夜を這う太古の羽の波紋かな

そよかぜシュレディンガー

夏井いつき先生より
何かやろうとしていることは伝わるのですが、ファンタジーに終わっている感じが、ちょっともやもやします。季語「白夜」が背景になっているのも、その一因かもしれません。
“ポイント”

押し寄せる葉の頂に百日紅

ヒロヒ

夏井いつき先生より
第56回『百日紅の名所』《並》⑥〈ぎっしりの緑ふわりと百日紅〉を推敲しました。『おしよせるはのいただきにさるすべり』と読みます。一番のポイントは、『頂に』と場所を示す助詞『に』を用いた是非です。『に』は散文になりやすい、と伺っていますが、状況に応じて、助詞を使い分けられるようになりたいです」と作者のコメント。

「百日紅」の一物仕立てに挑んでおられるのですね。季語の情報だけで一句にしあげる「一物仕立て」は、高度な技です。徹底した観察、精度の高い描写力が必要となります。そういう意味において、上五中七の描写に精度そのものに難があります。一度、この句は寝かせておいて、来年また「百日紅」の一物仕立てに挑んでみましょう。この一年間で俳筋力を身につければ、新たな切り口が見つかるかもしれません。
“ポイント”

「間違い探し」あとふたつアイス溶け

琥幹

夏井いつき先生より
語順を逆にすれば、人選です。

添削例
アイス溶け「間違い探し」あとふたつ
“ポイント”

立ち竦むペンギンの默氷海の烈

木漏

夏井いつき先生より
「寒さの中、立ち竦むペンギンの一方で、荒れ狂う氷海をイメージしました」と作者のコメント。

下五は一考の余地があります。あるいは、「氷海の烈や」から始める考え方もあります。
“参った”

鰯雲ペンギンの目は獣の眼

樋ノ口一翁

夏井いつき先生より
中七下五のフレーズを良しとした時、上五の季語のほうが脇役になってしまってます。再考してみましょう。
“ポイント”

小さき足音街は深夜の夕焼け

ひな野そばの芽

夏井いつき先生より
「ペンギン→南極→白夜の連想です。白夜って、23:00に太陽ギラギラなんですね。わたしが子どもだったら、絶対うちを抜け出して仲間と街を駆け回りたい! でもペンギンは影も形もなくなってしまいました」と作者のコメント。

白夜だと分かるような描写を入れないと、「深夜の夕焼け」って何? という疑問ばかりが大きくなります。
“ポイント”

夜這星「ペンギンて立つたまま寝るの」

夜汽車

夏井いつき先生より
助詞「て」を外すと、人選です。
“ポイント”

イルカショー飛沫を敢えて浴びて夏

水鳥川詩乃

夏井いつき先生より
「最近のイルカショーは『びしょぬれゾーン』なるものがあるそうです。涼を求める人たちが、イルカたちのたてる飛沫を浴びにいくとのこと。ニュースで映像を見た時に、『今月の句はこの光景で作ろう!』と思いました」と作者のコメント。

「敢えて浴び」と説明するよりは、「びしょぬれゾーン」のような言葉のほうが映像になります。
“ポイント”

少しだけ南極めいて月の暈

常然

夏井いつき先生より
「調べたら、南極は月の暈が綺麗に見えるというので、ペンギンも故郷を思い出すと想像してみました」と作者のコメント。

上五「少しだけ」が勿体ないです。この五音を、描写の言葉に変えてみましょう。
“ポイント”

「クレイジーケンバンドさん」山鳩の声はワルツや秋野行く

田中 百子

夏井いつき先生より
「山鳩の鳴き声は、なぜかリズム良く不思議と懐かしい気がしていました。クレイジーケンバンドの『山鳩ワルツ』を聴いたとき、これだ‼︎ と心が揺さぶられました」と作者のコメント。

曲名から句想を得た感謝の気持ちは分かりますが、前書きは不要です。「ワルツ」ではない書き方にすると、作品として自立することができそうです。
“参った”

凍晴や並ぶペンギン影揺れて

道草散歩

夏井いつき先生より
良い句材ですし、書こうとしている内容も良いです。中七下五を再考してみましょう。特に、「並ぶ」の位置は一考の余地があります。
“良き”

鶏頭や絶滅危惧種の象出産

芝香

夏井いつき先生より
「象の出産」に「鶏頭」を取り合わせる感覚は、実に面白いです。中七を言いたいのは分かりますが、作品として結球させるとすれば、「絶滅危惧種の」という説明は諦めたほうが良策です。
“ポイント”

手を引いてエイの腹見る夏終わる

長谷川しゅるた

夏井いつき先生より
「エイの腹」を観ることと「夏終わる」という季語の取り合わせはよいですよ。上五「手を引いて」は、そもそも不要な情報。どんなエイの腹なのか、描写してみましょう。
“ポイント”