第60回「双子のようなペンギン」《ハシ坊と学ぼう!④》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
ペンギンの水中を飛ぶ獺祭忌
浜 けい
夏井いつき先生より
「ペンギンは空を飛べないけれど、水中では自在に、まるで飛ぶように泳ぎます。また最初に挑戦する人を『ファーストペンギン』と言ったりします。正岡子規を思い、季語は『獺祭忌』としました」と作者のコメント。
下五の季語がベストかどうか? 悩ましいところです。
「ペンギンは空を飛べないけれど、水中では自在に、まるで飛ぶように泳ぎます。また最初に挑戦する人を『ファーストペンギン』と言ったりします。正岡子規を思い、季語は『獺祭忌』としました」と作者のコメント。
下五の季語がベストかどうか? 悩ましいところです。


炎天に鳳凰紋の青銅器
宇野翔月
夏井いつき先生より
「炎天や」とすれば、人選です。
「炎天や」とすれば、人選です。


母編みし吾のセーターや引っ越しの
桔梗郁子
夏井いつき先生より


渡り鳥反りて見上げる人鳥か
ビバリベルテ
夏井いつき先生より
「人鳥」に対して、「渡り鳥」を取り合わせるのは、少々意図が見えすぎます。


ペンギンの飛ばぬ理由に虫の声
帝菜
夏井いつき先生より
「ペンギンの飛ばぬ理由」までは良いのですが、取り合わせた季語は大いに動きそうです。助詞「に」も悩ましいかな。


渡り鳥飛べない鳥の無邪気な眼
トコトコ
夏井いつき先生より
中七下五のフレーズが言いたいことだとすれば、季語は「鳥」系でないほうがよいです。取り合わせのコツは、「付かず離れず」です。
中七下五のフレーズが言いたいことだとすれば、季語は「鳥」系でないほうがよいです。取り合わせのコツは、「付かず離れず」です。


冬空へ放つ蒸籠が、ばらけた
加賀屋斗的
夏井いつき先生より
「第57回『沖縄県の郷土料理』《ハシ坊と学ぼう!⑦》〈冬空へ放つ蒸籠は散けけり〉の推敲を試みました。複数人の食事を楽に作ろうと求めた蒸籠。ある事でついに嫌気がさして、重なる蒸籠を空にほおってしまい、蒸籠がばらけました。重なっていた蒸籠が空中でばらばらに浮かび、地については、ついにひとつひとつの蒸籠も留め具が解け、ばらばらと、ばらけてしまいました」と作者のコメント。
うーむ……なるほど。言いたいことが、「ついに嫌気がさして」なのですね。だから、「ばらけた」まで書きたいのだと理解しました。俳句は、たった十七音しかないので、このようなエピソードを全部書き込むのはとても難しいのです。しかも、実際に蒸籠を投げ、しかもそれがバラバラになってしまう。その光景を、多くの読者は想像しにくいので、更に伝わりにくいものになっています。このエピソードを何枚もの写真で綴っていくような、書き方をするしかなかろうと考えます。
「第57回『沖縄県の郷土料理』《ハシ坊と学ぼう!⑦》〈冬空へ放つ蒸籠は散けけり〉の推敲を試みました。複数人の食事を楽に作ろうと求めた蒸籠。ある事でついに嫌気がさして、重なる蒸籠を空にほおってしまい、蒸籠がばらけました。重なっていた蒸籠が空中でばらばらに浮かび、地については、ついにひとつひとつの蒸籠も留め具が解け、ばらばらと、ばらけてしまいました」と作者のコメント。
うーむ……なるほど。言いたいことが、「ついに嫌気がさして」なのですね。だから、「ばらけた」まで書きたいのだと理解しました。俳句は、たった十七音しかないので、このようなエピソードを全部書き込むのはとても難しいのです。しかも、実際に蒸籠を投げ、しかもそれがバラバラになってしまう。その光景を、多くの読者は想像しにくいので、更に伝わりにくいものになっています。このエピソードを何枚もの写真で綴っていくような、書き方をするしかなかろうと考えます。


団栗やデッキブラシとペンギンと
日吉とみ菜
夏井いつき先生より
中七下五のフレーズは良いのですが、上五の季語「団栗や」がちょっと唐突な感じです。実際に、動物園とかで、このような光景を見たのならば、全てを並列にする手もあります。
添削例
団栗とデッキブラシとペンギンと
中七下五のフレーズは良いのですが、上五の季語「団栗や」がちょっと唐突な感じです。実際に、動物園とかで、このような光景を見たのならば、全てを並列にする手もあります。
添削例
団栗とデッキブラシとペンギンと


レシピ入り伯母の畑の柚子届く
林としまる


炎昼にペンギンの背は漆黒
石川潤子
夏井いつき先生より
この場合の助詞「に」は、非常に勿体ない。単純に「や」で切るか、季語の位置を替えてみるか。やってみる価値はありますよ。


ツインズごとペンギン歩く秋日和
そうわ
夏井いつき先生より
「ツインズごと」は、双子のようにという意味でしょうか。書き方に多少無理があります。「双子」の方が三音なので、調べを作りやすいと思うのですが……。


似てるって違うことよねぇ枝豆
骨のほーの
夏井いつき先生より
やろうとしていることは良いです。調べだけ、あと一工夫できたらベストなのですが……。


ペンギンと病葉きいろい獣の匂い
鰯山陽大
夏井いつき先生より
「屋外のペンギンを見るスペースが山口県下関市の水族館・海響館にはあって、獣の匂いが立ちこめる空間に、病葉とペンギンと自分がいて、自然と生き物と娯楽の狭間を歩いている様子を俳句にしてみました」と作者のコメント。
ちょっと材料が多いか。単語を一つ外すか、二句にするかが、分かりやすい対処法でしょう。
「屋外のペンギンを見るスペースが山口県下関市の水族館・海響館にはあって、獣の匂いが立ちこめる空間に、病葉とペンギンと自分がいて、自然と生き物と娯楽の狭間を歩いている様子を俳句にしてみました」と作者のコメント。
ちょっと材料が多いか。単語を一つ外すか、二句にするかが、分かりやすい対処法でしょう。


目印は腿の痣なり運動会
三日月 星子
夏井いつき先生より
「双子が出る運動会を見に行って、どっちがどっちかわからない。カメラでズームして兄の方にある腿の痣を確認し、双子を見分けました。〈髪切って見分けがつかぬ夏の双子〉とも詠んでみましたが……」と作者のコメント。
双子だという前提が分からないので、何のための「目印」なのか。そこに引っ掛かってしまいます。
「双子が出る運動会を見に行って、どっちがどっちかわからない。カメラでズームして兄の方にある腿の痣を確認し、双子を見分けました。〈髪切って見分けがつかぬ夏の双子〉とも詠んでみましたが……」と作者のコメント。
双子だという前提が分からないので、何のための「目印」なのか。そこに引っ掛かってしまいます。


秋風や友の退部と胃カメラと
堂園 穂世
夏井いつき先生より
「秋風」と「友の退部」、「秋風」と「胃カメラ」の取り合わせならば、とてもよく分かるのですが、「友の退部と胃カメラと」というフレーズの意図が、少々掴みにくいです。
「秋風」と「友の退部」、「秋風」と「胃カメラ」の取り合わせならば、とてもよく分かるのですが、「友の退部と胃カメラと」というフレーズの意図が、少々掴みにくいです。


様変へど思ひわたるや二つ星
雪ん子
夏井いつき先生より
「年を重ね、互いにその姿形が変わってしまっても永遠に想い続けられるものだろうか。結婚三十年を過ぎて思います」と作者のコメント。
「二つ星」という季語以外に映像がないので、読者としては少々物足りなく思います。
「年を重ね、互いにその姿形が変わってしまっても永遠に想い続けられるものだろうか。結婚三十年を過ぎて思います」と作者のコメント。
「二つ星」という季語以外に映像がないので、読者としては少々物足りなく思います。


