第68回「監視カメラに鵜」《ハシ坊と学ぼう!④》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
冬の庭蒸籠の留め具外れけり
加賀屋斗的
夏井いつき先生より 評価 人
「第57回『沖縄県の郷土料理』〈冬空へ放つ蒸籠は散けけり〉、第60回『双子のようなペンギン』〈冬空へ放つ蒸籠が、ばらけた〉、第63回『十数年ぶりの大阪』〈吾の蒸籠UFOとなり神渡〉、第66回『お台場の桜』《ハシ坊と学ぼう!⑧》〈庭枯るる蒸籠の留め具外れけり〉の推敲で、季語を探しました」と作者のコメント。
ひとまず、この形で、人選をキープしておきましょう。更に、俳筋力が上がってくると、思いがけない季語との出会いに気づけるかもしれません。
ひとまず、この形で、人選をキープしておきましょう。更に、俳筋力が上がってくると、思いがけない季語との出会いに気づけるかもしれません。


初秋の駱駝は空へ鼻ひらく
滝川橋
夏井いつき先生より 評価 人
「第64回『砂漠のホテル』の投句〈鳥の風駱駝は空へ鼻ひらく〉の推敲です。『季語はこれでベストか』とのご指摘でした。東南アジアからロシアへ広い砂漠を渡る鳥がいるという記述を見て、飛びついた季語でした。一句に動物二つはいかがかとも思ったのですが、問題はその点でしょうか? また海外の映像は、日本と同じ季感で良いのかも迷いました。ちょっと自信無き推敲です」と作者のコメント。
初案は、やはり一句に生き物二つの例になるかと。海外詠については、例えば極寒の地にいけば冬の季語を使えばよいですし、熱帯の地であれば夏の季語を使うのが実感にそぐっていると、私は考えています。この地の渡り鳥の季節の光景を描きたいのであれば、秋の季語でよいのではないでしょうか。更に、ご自身の感覚にぴったりの季語との出会いもあるかもしれませんが、ひとまず、人選レベルは確保できました。
初案は、やはり一句に生き物二つの例になるかと。海外詠については、例えば極寒の地にいけば冬の季語を使えばよいですし、熱帯の地であれば夏の季語を使うのが実感にそぐっていると、私は考えています。この地の渡り鳥の季節の光景を描きたいのであれば、秋の季語でよいのではないでしょうか。更に、ご自身の感覚にぴったりの季語との出会いもあるかもしれませんが、ひとまず、人選レベルは確保できました。


桜吹雪フジは埋立13号地
高山佳風
夏井いつき先生より 評価 人
「第66回『お台場の桜』の〈桜吹雪くひとり埋立13号地〉の推敲句です。『悩ましいのは、調べの問題。「吹雪く」と動詞にする必要があるのか? 「ひとり」が作者にとってどこまで重要な情報なのか?』とアドバイスを受けました。『桜吹雪』とし、『ひとり』は『フジは』としました。事件報道で揺れたフジテレビの『フジ』です」と作者のコメント。
なるほど、「埋立13号地」はフジテレビが建っているあの辺りなのですね。俳句では、調べを尊重するために少し虚構を入れることもありますが(例えば「フジは埋立10号地」のような)、一句に「フジ」と固有名詞を入れると、それがやり難くなる心情も分かります。ひとまず、人選レベルは確保できています。これを更にブラッシュアップさせるか。このママの形で完成形とするか。ここからは、ご自身の判断になります。
なるほど、「埋立13号地」はフジテレビが建っているあの辺りなのですね。俳句では、調べを尊重するために少し虚構を入れることもありますが(例えば「フジは埋立10号地」のような)、一句に「フジ」と固有名詞を入れると、それがやり難くなる心情も分かります。ひとまず、人選レベルは確保できています。これを更にブラッシュアップさせるか。このママの形で完成形とするか。ここからは、ご自身の判断になります。


献上の鮎に咬創乱反射
ガジュマル新山
夏井いつき先生より 評価 並
「平成五年六月、研修のため、長良川近くのホテルに行きました。懇親会が終わった後、鵜飼を初めて見ました。後日、テレビで鵜飼の特集があり、『鮎に鵜の噛み傷があるのが鵜飼の証になる』と誇りを持って語っておられました。そして、皇居に献上されていることも知り、献上品になるのかと驚いたことを思い出しました。鮎のまっすぐな輝きではなく、噛み傷で穴が空き、反射が乱れている様を素直に作句しました」と作者のコメント。
上五中七は良いですね。下五「乱反射」で、並選レベルは確保。更に、ここを工夫すると人選に手が届きます。俳筋力を養ってから、来年あるいは再来年に再度挑戦してみましょう。
上五中七は良いですね。下五「乱反射」で、並選レベルは確保。更に、ここを工夫すると人選に手が届きます。俳筋力を養ってから、来年あるいは再来年に再度挑戦してみましょう。


猛る鵜や監視カメラの多き街
矢口知
夏井いつき先生より
中七下五を良しとした時、上五の季語は動きそうです。ひょっとすると、季語を比喩的に使っているのかもしれませんが。


祭の日カメラと鴉動き出す
メグ
幟立つ鴉とカメラに見守られ
メグ
夏井いつき先生より
「祭が行われると防犯カメラが活躍します。鴉はお客さんが残した食べ物を狙ってスキを見ています。二句目は、山歩きで野鳥の声は聞こえるのに、なかなか姿を見ることできません。 いつも鴉を見かけます。監視カメラは、私達の事をいつも見ているのですね」と作者のコメント。
二句ともに、「カメラ」は写真を写すためのカメラだと読まれる可能性のほうが高いと思います。監視カメラだと分かるように一工夫が欲しいところです。
「祭が行われると防犯カメラが活躍します。鴉はお客さんが残した食べ物を狙ってスキを見ています。二句目は、山歩きで野鳥の声は聞こえるのに、なかなか姿を見ることできません。 いつも鴉を見かけます。監視カメラは、私達の事をいつも見ているのですね」と作者のコメント。
二句ともに、「カメラ」は写真を写すためのカメラだと読まれる可能性のほうが高いと思います。監視カメラだと分かるように一工夫が欲しいところです。


見守りをさぼるサイレン片かげり
京あられ
夏井いつき先生より
「民生委員をしています。月一で担当区の独居宅を訪問します。暑かったり雨がひどかったりするとさぼる時もあって、そういう時に救急車が走ったりします。今年はさぼらずに歩きます」と作者のコメント。
なるほど、そういう事情を一句に押し込むと、読みのブレが生じやすくなります。とはいえ、これらの事情を全部入れることは出来ません。例えば、「救急車のサイレン民生委員の夏」のような切り取り方をすれば、作者の心情をさまざまに想像してくれる人はでてくるかもしれません。
「民生委員をしています。月一で担当区の独居宅を訪問します。暑かったり雨がひどかったりするとさぼる時もあって、そういう時に救急車が走ったりします。今年はさぼらずに歩きます」と作者のコメント。
なるほど、そういう事情を一句に押し込むと、読みのブレが生じやすくなります。とはいえ、これらの事情を全部入れることは出来ません。例えば、「救急車のサイレン民生委員の夏」のような切り取り方をすれば、作者の心情をさまざまに想像してくれる人はでてくるかもしれません。


松毟鳥鳴く声澄し富士青く
小川さゆみ
夏井いつき先生より
「第65回『バスからの眺め』〈松毟鳥鳴く声近く青き富士〉を推敲しました。松毟鳥の澄んだ声が近くに聞こえ、遠くに富士を見ていると表現したかったので、推敲しました」と作者のコメント。
「松毟鳥の澄んだ声が近くに聞こえ、遠くに富士を見ている」なるほど、表現したかったのは、そのニュアンスなんですね。「鳴く」は「声」に掛かっていきますし、「澄みし」の「し」も連体形だし、最後の「青く」も連用形。この書き方だと、全体が切れのない形になってしまいました。更に、「近く」の一語がないので遠近感がかえって弱くなってしまったのも損ではないかと。
「松毟鳥の澄んだ声が近くに聞こえ、遠くに富士を見ている」なるほど、表現したかったのは、そのニュアンスなんですね。「鳴く」は「声」に掛かっていきますし、「澄みし」の「し」も連体形だし、最後の「青く」も連用形。この書き方だと、全体が切れのない形になってしまいました。更に、「近く」の一語がないので遠近感がかえって弱くなってしまったのも損ではないかと。


鵜の笑ふ原発海の香りして
日光月光
夏井いつき先生より
「鵜の鳴き声は笑っているようです。監視カメラは海の近くの原子力発電所と考えました」と作者のコメント。
「原発(の)海」と「鵜」の取り合わせは良いですね。これを取り合わせるだけで、ある種の主張は読み取れるので、敢えて「笑ふ」と書かないほうが効果的です。
「鵜の鳴き声は笑っているようです。監視カメラは海の近くの原子力発電所と考えました」と作者のコメント。
「原発(の)海」と「鵜」の取り合わせは良いですね。これを取り合わせるだけで、ある種の主張は読み取れるので、敢えて「笑ふ」と書かないほうが効果的です。


水面の鵜篝やけに燃えたらむ
紫月歪丸
夏井いつき先生より
「当初は『燃えにけり』にしていましたが、断定するよりも川の流れや鵜の動きによる波により、船上よりも更に燃えているように見える様を表現できる『たらむ』にしました」と作者のコメント。
「けり」は断定ではなく、詠嘆です。
「たらむ」は、
① 完了の助動詞「たり」の未然形「たら」に推量の助動詞「む」の付いたもの 「…ただろう。…ているだろう。」「…してしまおう。…していよう。」など幾つかの意味。
② 断定の助動詞「たり」の未然形「たら」に推量の助動詞「む」の付いたもの「…であろう。…だろう。」の意。
さて、どの意味に読めばよいのか、「やけに」があるので悩ましいところです。
「当初は『燃えにけり』にしていましたが、断定するよりも川の流れや鵜の動きによる波により、船上よりも更に燃えているように見える様を表現できる『たらむ』にしました」と作者のコメント。
「けり」は断定ではなく、詠嘆です。
「たらむ」は、
① 完了の助動詞「たり」の未然形「たら」に推量の助動詞「む」の付いたもの 「…ただろう。…ているだろう。」「…してしまおう。…していよう。」など幾つかの意味。
② 断定の助動詞「たり」の未然形「たら」に推量の助動詞「む」の付いたもの「…であろう。…だろう。」の意。
さて、どの意味に読めばよいのか、「やけに」があるので悩ましいところです。


水仙やナルキッソスの憂うつ
まり
夏井いつき先生より
気持ち分かります。「ナルキッソスの憂うつ」というフレーズを大事にしたいのならば、季語を少し離したほうが良いですし、「水仙」を大事にしたいのならば、「ナルキッソス」と直接書かず、それを連想させるものに変えるのが定石です。
気持ち分かります。「ナルキッソスの憂うつ」というフレーズを大事にしたいのならば、季語を少し離したほうが良いですし、「水仙」を大事にしたいのならば、「ナルキッソス」と直接書かず、それを連想させるものに変えるのが定石です。


熱砂の目絆断たれし子やひとり
丸山美樹
夏井いつき先生より
「監視カメラがあり、戦場になった場所はたいがいスパイが入って散々な目にあっている気がします。ガザで家族みんな亡くなり、ひとりぼっちで泣いている小さな少女が可哀想でたまりませんでした」と作者のコメント。
「熱砂の目」という詩語に惹かれます。とはいえ、この凄惨な現状を「絆」という抽象的な言葉で表現できるのか。悩ましいところです。
「監視カメラがあり、戦場になった場所はたいがいスパイが入って散々な目にあっている気がします。ガザで家族みんな亡くなり、ひとりぼっちで泣いている小さな少女が可哀想でたまりませんでした」と作者のコメント。
「熱砂の目」という詩語に惹かれます。とはいえ、この凄惨な現状を「絆」という抽象的な言葉で表現できるのか。悩ましいところです。


上下するドローンの影や春深し
紫帆
夏井いつき先生より
「や」を外すと、人選です。
「や」を外すと、人選です。


鵜の見張る村にひとつの信号機
木村弩凡
夏井いつき先生より
「村にひとつの信号機」「島にひとつの信号機」はかなり頻繁にでてくる類想フレーズ。どんな季語を取り合わせるかで、独自性を出せるか否か? 難しいところです。
「村にひとつの信号機」「島にひとつの信号機」はかなり頻繁にでてくる類想フレーズ。どんな季語を取り合わせるかで、独自性を出せるか否か? 難しいところです。


「LAWSON」の灯らぬ「L」に燕の巣
井納蒼求
夏井いつき先生より 評価 並
「最近、コンビニの防犯カメラの上に燕が巣を作ったという記事を読みました。コンビニの燕の巣と言えば、前回のあし俳参加で松山へ行った際、話題になっている道後温泉のLAWSONの燕の巣を見ました。『LAWSON』の『L』の部分に巣があり、そこだけ照明をつけないため、夜間は『AWSON』と見えてしまいますが、お店が昼行性の燕のためにそうしているのだそうです。優しいですね~」と作者のコメント。
これはこれで映像がちゃんと書けています。ただ、道後商店街のローソンのこの光景を俳句にしたモノを、道後俳句塾などで多数見ているものですから、人選が付けにくいという類句の問題です。
これはこれで映像がちゃんと書けています。ただ、道後商店街のローソンのこの光景を俳句にしたモノを、道後俳句塾などで多数見ているものですから、人選が付けにくいという類句の問題です。


接吻の路地やトマトの花と支柱
小野睦
夏井いつき先生より
「トマトの花」より「接吻」という言葉の質量のほうが大きくなっている感じです。
「トマトの花」より「接吻」という言葉の質量のほうが大きくなっている感じです。


夏休み富士でポテチが太るわけ
加納ざくろ
夏井いつき先生より
「第65回の投句〈夏休みポテチふくらむわけを書く〉について、『富士登山の情報がないので、単にポテチが膨らんだだけにしか読めない』というコメントをいただき、推敲しました。『夏休み』の季語に託して、訳を調べたり、考えたり、書いたりという宿題をする行動が見えてくるものと思い、『わけ』で止めました。『で』は散文的かもですが、子供目線で。いずれにしても、ありがちな発想と自覚してますが……」と作者のコメント。
作者コメントには「『夏休み』の季語に託して、訳を調べたり、考えたり、書いたりという宿題をする行動が見えてくるものと思い『わけ』で止めました」とあります。これはひょっとすると、「富士山頂にポテトチップスを持っていくと、気圧の変化によって袋が膨らむ」ということを書きたかったのでしょうか。だとしたら、「ポテチふくらむ」「ポテチが太る」ではなく、「ポテチの袋」と書かないと意味が変わってくるのではと。
「第65回の投句〈夏休みポテチふくらむわけを書く〉について、『富士登山の情報がないので、単にポテチが膨らんだだけにしか読めない』というコメントをいただき、推敲しました。『夏休み』の季語に託して、訳を調べたり、考えたり、書いたりという宿題をする行動が見えてくるものと思い、『わけ』で止めました。『で』は散文的かもですが、子供目線で。いずれにしても、ありがちな発想と自覚してますが……」と作者のコメント。
作者コメントには「『夏休み』の季語に託して、訳を調べたり、考えたり、書いたりという宿題をする行動が見えてくるものと思い『わけ』で止めました」とあります。これはひょっとすると、「富士山頂にポテトチップスを持っていくと、気圧の変化によって袋が膨らむ」ということを書きたかったのでしょうか。だとしたら、「ポテチふくらむ」「ポテチが太る」ではなく、「ポテチの袋」と書かないと意味が変わってくるのではと。


背番号もらへぬ川鵜そりかへる
トウ甘藻
夏井いつき先生より
「背番号もらへぬ」は、鵜飼いの鵜として採用されなかった……という意味でしょうか。もしそうだとしたら、後半の描写は目が利いているので、前半もストレートに描写したほうが良いのではないかと。
「背番号もらへぬ」は、鵜飼いの鵜として採用されなかった……という意味でしょうか。もしそうだとしたら、後半の描写は目が利いているので、前半もストレートに描写したほうが良いのではないかと。



